設立から30年の節目に琉球新報と沖縄タイムスの論壇へ投稿しました。

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2026年5月10日 沖縄タイムス

「子への暴力防止 活動30年」

CAP(子どもへの暴力防止)という活動をご存じでしょうか。このCAPプログラムは英語の児童虐待防止の頭文字から取ったネーミングで、1978年にアメリカで作られました。このプログラムの中核は「安心・自信・自由」という3つの基本的権利が子どもにもあるということを伝えるものです。

私がこのプログラムを知ったのは、1995年、県立精和病院に勤務していて、児童相談所の方々と頻発する児童虐待事例への対応を研究している頃でした。それまでの対策は、悪い大人、ひどい親を治療し、矯正することが中心でした。子どもに対しても、世の中には怖い大人がいて、油断するとつけ込まれてひどい目に会うから気をつけなさいという脅し教育的なものでした。

それがこのCAPのプログラムは、子どもは「弱い、守られるべき存在」から、「自分の権利を行使して身を守ることができる存在」への転換を図ることでした。子どもにも強みがあり、仲間を助け、自分の身を守ることができることを教えるのです。しかも寸劇を用いながら、全員参加で楽しく行います。

この素晴らしいCAPプログラムに私たちは衝撃と興奮を覚えました。早速1996年に、おきなわCAPセンターを設立し、仲間たちは県外までこのプログラムを学びに行きました。そして1997年からこの予防教育プログラムを実施するようになりました。小・中学校・保育園などの教室に行き、「いじめ」「誘拐」「性暴力」に対して、子どもができる対策をロールプレイを通して体験してもらいます。声を出して楽しく学ぶと、子どもたちは「安心・自信・自由」のスローガンをすぐに覚え、友だち同士で助け合う下地が作られます。そのことで自己肯定感が高まり、自発的な行動が増えることが期待されます。

さらに、教師・保護者を対象とした「大人ワークショップ」も同時に行います。地域で大人が子どもと共通の思想を学び、子どもをエンパワメント(元気づける)する支援者になってもらうのです。
今年で、この活動が30年となりました。これまでに約18万人の子どもと大人たちにこのプログラムを届けてきました。県内の市町村は離島も含めほとんど回ってきましたが、まだ届けていない地域もあり、われわれはこれからもこの活動を続けていきます。

活動の30周年記念事業として、5月30日に沖縄県男女共同参画センターてぃるるに於いて、生みの親である森田ゆりさんをお呼びして講演会を開きます。

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2026年5月6日 琉球新報

「子の権利 安心・自信・自由 社会全体で守る覚悟を」

CAPという活動をご存じだろうか。Child Assault Prevention の頭文字をとったもので、こどもへの暴力防止の取り組みである。いじめや誘拐、性暴力など、あらゆる暴力からこどもが自分を守るための具体的な方法を伝えると同時に、「安心」「自信」「自由」という権利の主体であることを知らせる人権教育プログラムである。

私がCAPに出会ったのは1996年、児童相談所に勤務していた時だった。それ以前の4年間は、当時「教護院」と呼ばれていた沖縄実務学園で、非行の進んだこどもたちと向き合っていた。入所している児童の成育歴に心を痛めつつ、目の前で繰り返される激しい言動に、どう応じ、どう理解すべきか分からず、自分の無力さを痛感する日々だった。

転機は、児童虐待をテーマにした勉強会だった。現おきなわCAPセンター代表理事の長田医師の呼びかけで始まったその場で、私はようやく気づく。あのこどもたちの言動は、生育過程で受けた深い傷の表れ、いわば「心の叫び」だったのだと。あそこまで傷つく前に、できることはなかったのか。その問いの中で、CAPに出会った。

CAPの哲学は「力は外から与えるものではなく、その人の中にすでにある」というエンパワメントにある。「暴力は力を奪う」という言葉も、胸に深く刻まれた。奪われた力は、時間をかけた関わり(エンパワメント)によって回復しうる。その確信が、支援のあり方を根底から変えた。

CAPの実践は大きく二つある。こども向けの「こどもワークショップ」では、「安心・自信・自由の権利」を伝え、それが脅かされたときには「いや」と言ってよい、逃げてもよい、言えなかったとしてもあなたは悪くない、誰かに相談しようを繰り返し確認する。ロールプレイと対話を通じて、具体的な対処を共に考える楽しい時間だ。一方の「おとなワークショップ」では、こどもが暴力に遭わない環境をどうつくるか、被害にあったときにどう支えるかを学び、エンパワメントの関わりを通して「あなたは大切な存在」と伝える責任を共有する。

今年、おきなわCAPセンターは設立30年を迎えた。学校や地域で積み重ねてきた実践は確かな広がりを見せ、自治体との協働も広がってきているが、なお届いていない場所もある。すべてのこどもに「安心・自信・自由」を届けるためには、取り組みの裾野をさらに広げなければならない。

こどもの権利は理念ではなく、日常の中で守られてこそ意味を持つ。社会全体でその責任を引き受ける。その覚悟が、いま改めて問われている。