2020年5月25日
琉球新報(17面・生活)掲載

『新型コロナ 暮らしの現場 ーおとなたちへ・子どもの心の声聴いてー』

コロナ禍の今、
おとなの皆さんへお届けしたいメッセージを

琉球新報紙面で掲載していただきました

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コロナ禍の混乱の中で、
たくさんの不安を抱えながら暮らしている子どもたちは少なくない
自分や家族が感染して大変なことになるのではないかという不安。
経済的なストレスを抱えた親を見て、家族の生活がどうなるのかという不安。
進級・進学した新しい学校生活になじめるかという不安。

新しい学校に進学した人はもちろん、
すべての子どもにとって進級は新しい先生やクラスメートとの出会いであり、
新年度はいつも希望と大きな不安を抱える時期である。

長いステイホームの期間を終え、ようやく学校生活が始まった。
しかし当分は分散登校になる学校も多く、学校で過ごす時間が短かくなるところもある。
一部の子どもたちにはSNSを通じて仲良しグループができあがっていて、
友だちづくりに苦戦する子どももいるかもしれない。

私たちおとなは生活に追われると、このような子どもの不安や悩みを見落としやすい。
しかし子どもにとって、学校に自分の居場所を確立できるかどうかは、
少し大げさに言えば生きるか死ぬかの問題だ。

朝から晩まで子どもたちの世話に手を焼いた保護者は、
学校が始まって「やれやれ、これで子どものことはOK」と少し解放された気持ちになるが、
子どもたちは在宅時とは違う学校生活のストレスに襲われる。

もし子どもから「前のクラスの方が良かったな」と言われたら何と返すだろう。
「大丈夫、すぐ慣れるよ」と、おとなの人生経験からついアドバイスしてしまうかもしれない。

しかし子どもの心の声を聴くためには、
まずは「そう感じるんだね」と子どもの言葉を受け止める。

そして「そう感じるあなたの気持ちをもっと聴かせて」と言ってみる。
心の中のモヤモヤを言葉で表現するのが難しい子どももいることを頭の隅に置いて。

私たちおとなも悩みを聴いてもらうことで心が軽くなり、
解決方法が見えてくることがある。
そうは言っても相談されるとついアドバイスしたくなってしまうもので…ただ聴くことって案外難しい。

閉ざされた家の中で苦しい思いを抱えていた子どもたちにとっては
学校再開は家の外のおとなとつながるチャンスだ。
周囲にいるすべてのおとなが子どもの小さなつぶやきに耳を傾け
あなたの気持ちを聴かせて」と関わることを、いっそう心掛けていきたい。

(文/奥間智香枝・CAPスペシャリスト)