論壇~子どもへの暴力を防止するために~

県教育委員会が発表した部活動実態調査の報道を受け、
沖縄タイムスと琉球新報の論壇に寄稿しました

 

2022年4月10日 沖縄タイムス

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『暴力から身を守る知識必要ー子どもへの人権教育』

「暴力」という言葉を聞いて何が浮かびますか?小学校、中学校の授業の中で、子どもたちに問いかけると「なぐる」「ける」「悪口」「暴言」「いじめ」「SNS」いろんな言葉が飛び交う。「体罰」「DV」「虐待」「戦争」も出てくる。

次に「暴力を受けるとどんな気持ちになる?」と質問すると「イヤだ」「キツい」「つらい」「こわい」「苦しい」次々と声があがる。「そうだよね、暴力はどれも人の心と体を傷つけるものだね」「暴力にあわないためにどうしたらいいか一緒に考えよう」と、CAP(子どもへの暴力防止)の授業が始まる。「暴力」という言葉だけだと自分とは無縁と思いがちだが、案外自分の身近にもあると気づくことで興味を持ってくれる。丁寧に発達段階にあわせて伝えることで子どもたちはしっかりと理解していく。

では、暴力の被害にあいそうになった時に何ができるか?「いやだ」と言ってもいい。だけど、力関係の中で「いや」と言うことができない場合もある。その時は逃げることもひとつの方法。でも、閉鎖された空間や関係性の中で、逃げることが難しい場合もある。次にできることは?誰かに助けてもらう、相談する。これは当たり前のことだが、暴力によって人権を侵害されている時、暴力被害が繰り返され孤立させられると、どんなに「相談して」「あなたは悪くない」と伝えても、絶望の中ですべての選択肢を奪われる。だからこそ、人権意識をもつこと、暴力から身を守る知識の力が必要なのだ。

「子どもに人権を教えたらろくなことがない」「知識を逆手にとる」という声も時々聞こえるが、子どもに知識を与えることを恐れないで。暴力は力関係の中で生まれる。親だから、先生だから、おとなだから、許されるということはない。県立高校の部員や指導者、保護者を対象にした2回目の部活動実態調査でも、いまだに解決しない暴力に悩む子どもがいることがわかる。子どもを孤立の果てまで追い込みたくない。

暴力防止の授業を受けた子どもたちから「自分がやってたことは暴力だったかも」「私はこれまで友だちにひどいことを言ってた」「ムカついたらすぐに手を出すクセをやめたい」「ちゃんと考えてから言うようにしたい」たくさんの感想が寄せられる。子どもは、自分事として考え、気づき、変わろうとする力を持っている。私たちおとなも学びによって変わりたい。

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2022年4月14日 琉球新報

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『暴力にNOという社会に―子どもの声に耳を傾けて―』

県教育委員会が県立高校の部員や指導者、保護者らを対象に実施した2回目の部活動実態調査の結果が発表された。暴力や暴言、ハラスメントを受けたと答えた部員の76.9%は問題が「解決されていない」と答えている。「最初に誰に相談したか」の問いには「同じ部の部員」が最多で40.0%、次いで「誰にも相談できていない」が32.4%だった。

暴力と聞いて、皆さんはなにを想像するだろうか。なぐる・ける、というイメージが強いかもしれないが、それだけではない。言葉による暴力・暴言や無視、仲間外れ、体罰、セクシャルハラスメント、虐待など、子どもたちの周りには、実にいろいろな暴力がある。これら全ての暴力に共通する特徴は、暴力は力を持つ者から力を持たされていない者へ向かう、力関係の下で起こるということだ。

生活の様々な場面において、子どもたちは力を持たされていない立場に立たされることが多い。親と子、先生と生徒、先輩と後輩のように、力の差が歴然とある時、力を持つ側が無自覚にその力を使うことは暴力となり得るのだ。

おとなの側は、その子のためによかれと思い、期待をしたり、自分もそうやって教えられてきたから、など、様々な思いの中で、一生懸命子どものためにと関わっているのかもしれない。しかし、たとえどんな理由があったとしても、許される暴力はない。そして、繰り返すが、暴力は手を出しさえしなければ良いのではない。心を傷つけるような関わり方もNOだ。

CAP(子どもへの暴力防止プログラム)では、子ども達には、暴力から身を守るために出来ることについて具体的に伝え、またおとな達には、子どもの人権を守るために出来ることについて伝えている。人権の尊重はあらゆる暴力を防止するために不可欠で基本的な考え方だからだ。教職員向けプログラムに参加したある教員が「自分は子どもの話にちゃんと耳を傾けているか、子どもの人権をちゃんと尊重できているか、改めて振り返ることができた。ついつい、先生という立場で、強い立場に立った目線、言葉になっていなかったかなと反省した。」と感想をよせてくれた。おとなが暴力について学び、知ることで、子どもとの関係を見つめ直す姿勢が今、問われている。

先の調査で暴力被害に悩んでいる生徒の多くは未解決のままであるのに、3割近い子どもが「誰にも相談できない」と答えている。このことからも分かるように、子どもにとって「相談」は実はとてもハードルが高い。人権意識を持ち、子どもの声に耳を傾けるおとなが増えることで、暴力にNOという社会を目指していきたい。

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